教育熱心で有名な韓国。大学受験を控える高校での受験勉強にフォーカスが当たりがちですが、実は中学校から本格的に子供たちは教育戦争の渦に巻き込まれていくんです。日本と違い高校受験がない韓国なのに、なぜ中学入学と同時に勉強三昧の日々を送ることになるのでしょうか。
また中学3年間は思春期と被り、親子関係だけでなく学校生活においても悩める時期ですよね。しかし韓国では思春期の事情も日本とは違うんです。
そこで今回は、現地在住の筆者が韓国の中学校事情についてご紹介します。
韓国の中学校事情!在住者に聞く7つの特徴!
1. 韓国は高校受験なし。その代わり内申成績が重要!
韓国は私立高校等の特殊な学校に行くケースを除いて高校受験はありません。では中学校3年間はのんびり過ごせるのでは…なんて思いますが実は全くそんなことありません。中学生になったら小学校では塾に行っていなかった子たちも皆塾に通い出します。
その理由は高校の進路が中学3年間の内申成績で決まるからです。つまり中学1年生の成績からということで、子供たちは本腰を入れ始めるんですね。内申成績は教科成績と人性成績に分けられ、1年生の成績は20%、2年生の成績は30%、3年生の成績は50%反映されます。
なお、高校については以下の記事にまとめていますので、こちらもチェックしてみてください。
2. 内申成績には奉仕活動も含まれる!
内申成績は教科成績と人性成績に分けられると書きました。教科成績は中間・期末試験の点数だろうと予想がつきますが、人性成績は聞きなれない言葉ですよね。人生成績には欠席・遅刻数、授業態度の他、奉仕活動が含まれます。奉仕活動が内申に含まれるなんてちょっと驚きですよね。しかも学校で行うものだけでなく、個人で申請して行う必要もあるんだそうです。
強制的に行う奉仕活動は本当の意味での奉仕活動なのかという疑問が湧きますが、これは高校に入っても続いていきます。
3. 中学1年生は中間・期末試験がない!
韓国では2013年から(全面施行は2016年から)中学1年の1年間「自由学期制度(자유학기제/ジャユハッキジェ)」を導入し、自分の適性について知り、進路について考えるようカリキュラムが立てられています。
授業は黒板を写すような受け身型ではなく討論や実習といった能動型の内容が多くなり、中間・期末試験がありません(小テストはアリ)。試験がない代わりに芸術やスポーツなど、勉強教科以外の科目の活動時間に集中することも可能という制度です。
評価はディスカッション等での発表内容、授業態度、実習・実験内容の理解度などによって判断されます。
なお、将来就職する時の韓国の今の現状を以下で解説しています。勉強戦争を乗り越え最後に社会に羽ばたく今の韓国人学生の現状をぜひチェックしてみてください。
4. 部活はなし。学校が終われば塾へ直行!
日本では中学から部活動が始まりますよね。青春の1ページとして部活動に関する思い出がある人もたくさんいるのではないでしょうか。ところが韓国は部活動自体ありません。学校によりますが、あっても週1度に1時間程度なんだそうです。
授業が終われば塾がある日は塾へ直行、ない日は友達と屋台に行っておやつを食べたり、カラオケやPCバン(日本で言うネットカフェみたいなところ)で友達と遊んだりして過ごしています。日本には「文武両道」と考えがあるため勉強のみでなくスポーツにも勤しむ、というのは珍しくありませんが、韓国は「1つを極める」というスタイルの方が主流なのも影響しているように思います。
5. 韓国はお弁当なし!給食でしかも無料!
日本のママたちを悩ませるのが毎日のお弁当。しかし韓国では日本ほどお弁当文化が根付いていないのもあってか、中学校になっても昼ご飯は給食です。しかも無料なのでママたちにとっては嬉しいですよね。
しかし子供の立場からすると、日本の中学生のように仲の良い子たちと弁当のおかず交換をするのに憧れる…というのもあるんだそうです。
6. 韓国の子たちは思春期でも目上の人を敬う
中学と言えば思春期。大人に反抗するようになって手を焼いている親御さんや教師たちも多いのではないでしょうか。ところが韓国では事情が違います。
というのは韓国は儒教の教えが未だに根強く残っているせいか目上の人が絶対なので、日本の子どものように親の事を「ばばぁ」「じじぃ」なんて言うことは御法度。そして先生は韓国語で선생님(ソンセンニム)、直訳すると「先生様」となり、先生は敬う対象のひとりなのでこちらも先生の言うことは絶対です。
そのため、日本の中学生のように(皆ではないでしょうが)反抗することがあまりありません。むしろ親子間で言うといくつになっても距離が近いままで、親が子になんでもしてあげるのが当たり前です。母や息子、父や娘という組み合わせで手をつないでるのも頻繁に見かけます。
そして日本で問題になっている不登校。韓国では「親に怒られるから」と不登校になることはほとんどありません。韓国では思春期=反抗期ではないんですね。
なお、韓国語の敬語については以下の記事で詳しく解説していますので、合わせて読んでみてください。
7. 受験は基本的にナシ。小学校と同じく近所の中学校に振り分けられる。
最近日本ではお受験ブームで中学校受験も熱いと聞きますが、韓国では基本的に中学受験はありません。小学校と同様近所の中学に行くことになります。ただ韓国にも数は少ないですが私立中学や特殊中学と言われる国際中学、体育中学、芸術中学はあります。
私立中学に行く場合は特に試験はなく、あっても面談程度。体育中学は大会で上位の成績を収めたぐらいのスポーツのエリートなら推薦で入学可能で、面談で途中で諦めずに続けられるのか素質を見られるんだそうです。芸術中学は全州に有名な学校がありますが、芸術中学と前面に名を出している学校が少なく、また高校進学のために近年は人気が下がり傾向です。
そして国際学校。こちらは学校にもよりますが一部の科目を除いて全て英語で授業を行うなど、ハイレベルな語学能力を入学時に問われます。入学の条件としてTOPIKやTOEICまたはHSKやJLPT等の点数が必要だったり海外居住歴が数年以上あるといったものがあります。
ほとんど私立である国際学校の学費は相当高く、1年で約1500万ウォンほどかかる学校もあります。それでも国際学校は俄然人気です。言語教育の面ではもちろん、難関と言われる高校に行ける確率が高いからです。ちなみにですが公立中学の学費は無料です。
なお、TOPIKについては以下の記事で特集していますので、韓国語を本気で勉強したい方はぜひチェックしてみてください。
まとめ
いかがでしたか?
高校受験がないのは羨ましいですが、内申成績が反映されるということで中学入学同時に塾通いが始まる韓国の中学生。日本のように部活がないのでほとんどの子どもが勉強にどっぷり浸かることになります。これも「良い大学」に入って「良い企業」に就職するためではあるのですが…。部活が青春の思い出として残っている筆者にとってはなんとなく悲しい気がします。
ただ思春期になっても目上の人に逆らわないのは親の立場からすると有難くはありますよね。韓国ならではの事情ではないでしょうか。ちなみに中学生になると子供たちの眼鏡率が一気に上がります(特に男子)。勉強漬けの毎日の上に小学生からスマホを持ってて当たり前という事情と、男子ならPCバン(ネットカフェ)に行って友達と遊ぶことが多いのが理由なんだそうです。
将来のために幼い時から教育戦争に巻き込まれる韓国の子どもたち、皆さんはどのように感じましたか?
韓国の中学校事情!在住者に聞く7つの特徴!
1. 韓国は高校受験なし。その代わり内申成績が重要!
2. 内申成績には奉仕活動も含まれる!
3. 中学1年生は中間・期末試験がない!
4. 部活はなし。学校が終われば塾へ直行!
5. 韓国はお弁当なし!給食でしかも無料!
6. 韓国の子たちは思春期でも目上の人を敬う
7. 受験は基本的にナシ。小学校と同じく近所の中学校に振り分けられる。